失業手当、受けられる?
最近、景気低迷から企業は人件費を抑制する 傾向にあります。人件費の抑制と一言で言ってもさまざまな手段があります。例えば、工場などで労働時間(稼働時間)を1日12時間から8時間に減らした り、週のお休みを1日増やして週休3日にしたりするワークシェアリング的な手段や、最近良く耳にする期間従業員の雇止め、会社都合による退職勧奨や解雇な ども代表的な人件費抑制の手段です。
ワークシェアリングであれば雇用が継続していますので、従業員の生活は一定水準で保障されますが、雇止めや解雇となった場合には、
収入源を確保することが最重要となります。その為の制度として雇用保険制度がありますが、いざ失業手当を受けるとなった時、自分が本当に受給できるのか(受給要件)、受給の手続きと受給開始のタイミングはどうなのか、などといった点について意外に知らない方が多いように思います。
具体的な例で見ていくと?
C株式会社:「会社の業績が著しく悪くなったから3ヵ月後に辞めて頂きたいのです。」
A氏(従業員):「3ヵ月後ですか?そんな急に言われても転職先をすぐに見つけるのは難しいし、何とかならないですか?それにまだこの会社に就職して8ヶ月しか働いていないですし。」
例えば、このように企業側から退職勧奨をされて最終的に従業員が同意した場合、退職するまでに転職先が見つからないときは、退職後に失業手当(正確には基本手当)を受給することになります。
ただし、全ての方が受給できるわけではありません。一定の要件を満たす必要があります。通常、過去2年間に賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月 が12ヶ月間あれば要件を満たします(その間、雇用保険の被保険者であることが必要です)。月給の方で、特に休職することなく直近で12ヶ月間給与が支払 われていれば、受給要件を満たすことになります。
さて、A氏ですが、C株式会社で8ヶ月間しか働いていません。転職先も決まっていない のに、明日からの収入が途絶えてしまいます。雇用保険制度では、このような場合でも失業手当を受給できる制度を備えています。会社経営上の都合により退職 となった場合には、多少要件が緩和(上記12ヶ月間が6ヶ月間に)されます。
失業保険は受給可能と分かりましたが、給付されるタイミングによっては収入が途絶えてしまいます。正当な理由がない自己都合での退職、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合、
1ヶ月~3ヶ月間は給付が制限される(給付制限期間)と決められています。A氏の場合は、会社都合による退職ですので、給付制限される期間はありません。最短での受給開始は、ハローワークへ手続きに行った後、待機期間の7日間を経た後となります。実際に失業手当が振込まれるのはもう少し後になりますが・・・
会社の都合といっても
人件費抑制などの為、期間従業員の契約期間を更新しない場合、当事者間での退職手続きは一般的には解雇に準じた手続きを行う必要があるとされていますが、雇用保険の失業手当に関していえば、
あくまでも契約期間満了として取り扱われることになります。通常、会社都合退職のように受給要件の期間については緩和されませんので注意が必要です。
最後に・・・
厚労省は、非正規社員へのセーフティーネットとして、雇用保険制度改革のなかで非正規社員への適用拡大を検討し始めました。しかしながら、新たに保険の適 用範囲に加わる労働者は148万人にとどまると言われており、雇用保険未加入者約1,006万人の8割強が対象外となるようです。加入要件や失業手当の受 給要件を緩和しすぎても働く意欲を削ぐことになると思いますので、均衡が取れるように慎重に検討していただかなくてはと感じています。
提供:株式会社FP総研
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