感覚を研ぎ澄まし仕事に向き合う~ソムリエ 佐藤陽一
ソムリエの仕事の中で、特に嗅覚でワインを覚えるというのは驚異だ。理屈としてはありうることだが、おそらく脳の中の言語などをつかさどるシンボリックな中枢と結びついて、うまくカテゴリー化などが行われているのだと思う。
その一方で、言語では表現できない微妙なニュアンスを感じ取っている。どんな仕事でも言葉で表現できることと、できないものを、どのように組み合わせたり有機的に積み重ねるかは非常に大事なポイントだ。言葉に拠らないとコミュニケーションできないものがある。一方で、言葉だけで尽きていると思うと感覚の世界が開かれない。
感覚を開くというのはどんな職業でも大事なことだと思う。実際に何が起こっているか、感度を上げて情報を集めていく。これは危機管理という意味でもすごく大事なことだ。そういう意味で感度が開かれていない人は、どんな分野でも良い仕事はできない。
日本を代表するソムリエの佐藤陽一さんに話を伺って、自分の仕事のスタイルを見つけるということについての、佐藤さんの執念というか、妥協しないところに感銘を受けた。
自分の店を持って、ワインにかかわるすべてのことを自分が観察し、コントロールするという佐藤さんの思い描く仕事のありかたを、有名店で働くという安定した生活を捨てても実現しようとした。
今の仕事のやり方や環境が、自分に合っているか、自分の理想にかなっているかということに対する鋭敏な感覚を持ち、それを変えることを実行する勇気が、素敵だなと思った。これはどんな仕事の人にとっても大事なことではないか。
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